異文化マネジメントとは? 実践のうえでのポイントや日本と海外の違いも解説
多種多様な文化を背景にもつ人材とともに働くことは、今や珍しくありません。そのような潮流のなかで注目を集めているのが、異文化マネジメントです。
しかし、異文化マネジメントについて、大まかにしか内容を把握していない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、異文化マネジメントの詳細や、実践するうえで重要なポイントを解説します。
異文化マネジメントとは
異文化マネジメントとは、異なる文化をバックグラウンドにもつ社員同士、あるいは組織全体をマネジメントすることです。多種多様な価値観を組織に取り入れつつも、社員の間ですれ違いや誤解が発生するのを防ぎ、全体のパフォーマンスを高めていくことを目的としています。また、暗黙の了解とされてきた風習を洗い出し、従来的な風土や文化を改革することも、異文化マネジメントの一環として行われます。
このような異文化マネジメントの実践は、誰でも容易にできることではありません。自身と異なる価値観をもつ人物を理解し、協働するためには、異文化理解やグローバルマインドを育む、適切な準備の必要があります。
異文化マネジメントが求められる背景
異文化マネジメントへの対応が急務とされている裏には、ビジネスのグローバル化の加速という課題があります。
今日、上記の課題に無関係な企業はほとんどありません。国内外問わず多くの企業において、海外に社員を派遣する、あるいは海外から派遣する、外国籍社員を雇用することが、当たり前になりつつあるためです。実際外務省のデータによると、海外に長期滞在している邦人の数は、2000年から2019年までで約36万人も増えていることが分かります。
また、異文化とは、日本人と外国人の間でのみで生じる問題ではありません。企業文化、部門間、世代など、日本人同士であっても異文化は生じます。
これからの時代を生き抜いていくためには、異なる価値観をもつ社員を統括する、異文化マネジメントの能力が必要不可欠だといえます。
出典:外務省『海外在留邦人数調査統計』
異文化マネジメントを実践するうえで重要なポイント
組織全体で異文化マネジメントを実践するにあたっては、以下の3つのポイントを重視しなくてはなりません。
①バイアスを認識する
「自分には潜在的なバイアスがある」と自覚することは、異文化マネジメントを実践するうえで非常に重要です。
特定の文化圏で育ち生活を続けていれば、誰であれ少なからずバイアスをもつのが当然であり、それ自体は決して悪いことではありません。しかし、そのバイアスをもったまま異なる文化圏の人々と交流することは、誤解やすれ違いを引き起こす原因となりえます。
異文化マネジメントの実践においては「自分が当然だと思ってきたこともバイアスの一つなんだ」という自覚をもち、ゼロベースで相手に接することが大切です。
②論理的で分かりやすいコミュニケーションを心がける
多種多様な価値観が入り交ざる組織で円滑に業務を進めるためには、論理的かつ明瞭なコミュニケーションも欠かせません。
”空気を読む”という表現があるように、日本では相手の意図を察する「空気を読む」「阿吽の呼吸」など、ハイコンテクストなコミュニケーションが多い傾向にあります。しかし、海外ではこのようなコミュニケーションが通じるケースは少なく、基本的には伝えたい内容をはっきりと明文化することが求められます。
ですから、異文化を背景にもつ人々と交流する際は、「これは当然分かってくれるだろう」という考えを捨て、相手が誰であっても内容が伝わるような、ローコンテクストな会話を心がける必要があります。
③異なる国や文化圏の考えを理解する
異なる国や文化圏の人々が重要視している考え方を理解することも、必要な要素です。
異文化理解を深めるうえでは、”ホフステードの6次元モデル”が活用できます。これは、世界各国における価値観を、6つの観点で相対的に比較できるようにしたモデルです。各観点は0~100のスコアで数値化され、その値の高低で傾向を確認できるようになっています。
▼ホフステードの6次元モデルの概要
観点 |
スコアが高い国 |
スコアが低い国 |
権力格差 |
組織内での権力差が受け入れられる傾向にある |
平等な関係が優先される |
個人主義/集団主義 |
個人主義の傾向が強く表れる |
集団主義が尊重される |
男性性/女性性 |
能力で優れていること、目標の達成を優先することなどの、男性性的な側面が強く出る |
他社に寛容であること、パーソナルな時間を大切にすることといった、女性性の側面が重視される |
不確実性の回避 |
不確実なことが脅威とみなされ、規則や慣例が重視される |
不確実なことに対する危機感がなく、柔軟な対応が優先される |
短期志向/長期志向 |
努力がすぐに結果に結びつくことや、個人主義が優先される短期志向の傾向がある |
結果が出るまで長期的に努力することや、全体的な観点が重視される長期志向が好まれる |
人生の楽しみ方 |
楽観的かつ人の欲求に寛容で、自身が幸せである、健康であると感じる人が多い |
個人の幸せや余暇があまり重要ではなく、欲求に対する抑制的な考えをもつ人が多い |
このモデルを用いて価値観や考え方の違いを把握することが、異文化マネジメントの成功へとつながります。
日本とアメリカのマネジメントの違い
最後に日本とアメリカを例に挙げて、マネジメントに対する考え方の違いをより具体的に解説いたします。
日本とは長い付き合いであるアメリカでは、どのようなマネジメントが行われているのでしょうか。
階級主義か平等主義か
日本とアメリカでは、組織の階級に対する意識がまったく異なります。
日本では、学校でも会社でも目上の人を敬うことが重視されます。先輩に意見したり、上司を押しのけて発言したりするような姿勢は、あまり一般的ではありません。
対するアメリカでは、組織での上下関係や年齢といった要素がほとんど重視されず、非常にフラットな人間関係が構築されます。一人ひとりの意見が尊重され、比較的カジュアルに意見交換が行われます。
この二つの考え方に対して、単純な優劣をつけることはできません。しかし、こうした違いがあることは理解しておかないと、いざアメリカの方と働くとなった際に、予想だにしないトラブルが発生してしまいます。
マイクロマネジメントか独立独歩か
部下の仕事に対する上司の姿勢も、日本とアメリカでは違うものとなります。
”ほうれんそう(報連相)”が重視される日本では、部下の仕事内容や進捗状況を、上司が常に把握していることが理想とされています。
一方で、アメリカ人の上司は、事細かに部下をマネジメントすることがありません。アメリカではジョブ型雇用が一般的であり、部下にはその人が得意とする分野の仕事が振られるため、上司が口出しする必要がないからです。それゆえに、日本式のマネジメントでアメリカ人の社員を管理しようものなら、大きな反発を受ける可能性があります。
このように、日本でのやり方が通用しない場面は数多くありますし、だからといって、アメリカ式のマネジメントが正しいというわけでもありません。アメリカ人の中でも人によって傾向も違いますし、アメリカで仕事をしていたとしても、アメリカ人のみならず、別の国の人をマネジメントする可能性もあります。
互いに理解し合い、最適な方法を模索することが、異文化マネジメントにおいてもっとも大切な要素です。
まとめ
この記事では、異文化マネジメントについて以下を解説しました。
- 異文化マネジメントとは
- 異文化マネジメントが求められる背景
- 異文化マネジメントを実践するうえで重要なポイント
- 日本とアメリカのマネジメントの違い
グローバル化の進む現代においては、異文化マネジメントへの対応が非常に重要です。また、異文化マネジメントを実践する際には、本記事で紹介した3つのポイントを忘れずに意識してください。
加えて、異文化理解、異文化マネジメントを推進していくうえで、重要なこととして、知識のインプットだけでは、新たなバイアスを生んでしまう可能性がある点があります。知識のインプットと併せてシミュレーションやケーススタディなど、体験に基づく理解が欠かせません。
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