異文化コミュニケーションとは? 失敗例やポイントも解説
グローバル化や多様化といったワードが身近となった昨今、自身とは異なる価値観をもつ相手と仕事をする機会が、徐々に増えつつあります。そこで重要となるのが、”異文化コミュニケーション”です。
今回は、異文化コミュニケーションとは何か、そしてその失敗例や実践のポイントを解説いたします。
異文化コミュニケーションとは
異文化コミュニケーションとは、その名が示す通り、自身とは異なる考え方やバックグラウンドをもつ相手と、コミュニケーションをとり交流を図ることです。ここでいうバックグラウンドには、国籍のみならず、年齢や性別、歴史、文化など多種多様な要素が含まれています。異文化コミュニケーションは、海外の方との交流だけではなく、日本人同士でのやりとりでも必要となる機会があるわけです。
異文化コミュニケーションにおいては、自身の価値観を押しつけたり、相手の価値観を非常識だと決めつけたりしてはなりません。客観的に自身と相手の違いを理解し、尊重する姿勢が求められます。
異文化コミュニケーションを重視すべき理由
近年、多くの日系企業が異文化コミュニケーションの推進に努めています。しかし、なぜ異文化コミュニケーションは重視されているのでしょうか。
ここでは、その主な2つの理由を説明いたします。
①日系企業のグローバル化が進んでいるため
まず大きな理由として挙げられるのは、日系企業のグローバル化が進んでいることです。
事業の拡大を目的に外資系企業と連携する、あるいは海外市場へ進出する日系企業の数は年々増加しています。それに付随して、異なる言語や文化をバックグラウンドにもつ方とやり取りをする機会も自然と増え、異文化コミュニケーションの重要性が高まりました。各企業が異文化コミュニケーションの重要性に注目し始めたのには、このような背景があります。
②多種多様な人材を確保し活用するため
異文化コミュニケーションは、多種多様な人材を活用するうえでも、非常に重要な役割を担っています。
海外に進出せず国内だけで活動する企業でも、労働力の改善を目的に、外国人労働者を雇うケースは往々にしてあります。従来は男性ばかりだった職場で女性を採用する、高齢者や障がい者の方に活躍してもらうといった事例も多く、多様性の広がりはとどまることを知りません。
しかし、異文化コミュニケーションへの取り組みが不完全な状態では、多様性に富んだ人材の確保は難しく、採用できてもすれ違いや衝突が発生しかねません。多様な価値観をもった人材に活躍してもらうためには、雇用者側が異文化コミュニケーションに取り組み、職場環境を整えてあげる必要があります。
異文化コミュニケーションの失敗例
異文化コミュニケーションに取り組み始めたはよいものの、勝手が分からず失敗してしまった、という話は決して珍しくありません。
ここでは、異文化コミュニケーションにおいて注意すべき失敗例を、5つ紹介いたします。
①ハイコンテクストなコミュニケーションに頼ってしまう
ハイコンテクストなコミュニケーションに頼り失敗する、というのは、特に日本ではよくみられるパターンです。
日本人は、文脈や発言のニュアンスから真意を察してもらうという、ハイコンテクストなコミュニケーションに慣れている傾向があります。しかし、このようなコミュニケーションは、日本に慣れていない方には曖昧で不明瞭であると受け取られてしまいます。
特に海外の方とやり取りする際には、言いたいことややってほしいことを明確にするのが大切です。何か質問する際にも、YESかNOで答えられるシンプルで分かりやすい表現を用いると、スムーズに話を進められます。
②非言語コミュニケーションで誤解を招いてしまう
普段何気なく使っているジェスチャーや、発言の際の表情などの、非言語コミュニケーションの面でも注意を払う必要があります。
例えば、日本では問題ないことを意味する”OK”のハンドサインは、フランスでは”無価値”であることを意味します。この例に限らず、日本では問題ないとされているジェスチャーや表情が、ある国では不謹慎であったり、失礼であったりすることは、珍しくありません。非言語コミュニケーションは、ときには使わないほうが賢明であると、理解しておいてください。
③従来的な上下関係を押しつけてしまう
日本の従来的な上下関係を良く思わない方は少なくないため、押しつけないように注意してください。
上司や目上の方には敬語を使う、といったような礼儀作法は日本では当たり前ですが、海外ではそうした上下関係が形成されることはそれほどありません。相手が上司であっても言いたいことは言う、ファーストネームで呼びかけるなどは日常的な光景です。このような認識の違いから、誤解やすれ違いが生じないように努めることも、異文化コミュニケーションでは求められます。
④会議の場で消極的になってしまう
日本では、会議でほかのメンバーを気遣って、自身の発言を控えても大きな問題にはなりませんが、海外では評価が下がる大きな要因の一つとなりえます。なぜなら、海外では多くの場合で、とにかく率先して意見を出すことが重要視されているからです。
もし海外のメンバーが多くを占める会議に出る機会があるなら、積極的な姿勢を見せることを意識してみてください。
⑤不用意なユーモアや発言でタブーに触れてしまう
場を和ませる意図で発言した内容が、相手の歴史的、あるいは文化的なタブーに触れてしまう可能性もゼロではありません。
ユーモア一つとっても、出身地や属する文化圏などの違いによって、どのように受け取られるかはまったく異なります。そのうえ、政治や宗教の観点から、特定の話題あるいは単語がNGである方もなかにはいます。
親しくなるための話題作りに臨む前に、相手の考えや主義・主張を事前にきちんと把握しておくことが肝要です。
異文化コミュニケーションのポイント
最後に、異文化コミュニケーションを実践するうえで重要となる、3つのポイントを解説します。
①文化や歴史の違いを受け入れる
人によって触れてきた文化や歴史がまったく異なり、それゆえに物事に対する考え方も変わってくる、という事実を理解することが重要です。特に、人間関係や仕事への取り組み方、時間に対する意識にはその違いが大きく表れます。
例えば、海外では仕事において”報連相”はさほど重要視されていません。くわえて、納期や待ち合わせなどの、約束の時間を守らないことも多々あります。そのような事態に直面した際には「自分の常識が通じて当たり前ではないんだ」というマインドで、フレキシブルに対応することが大切です。
②客観的な視点をもって接する
実際に自身と異なる考えをもつ方と出会った際は、感情的にならず、客観的な視点をもって接することを意識してください。また、客観的に相手と接するうえでは、「この地域の人はこういう特徴のはずだ」といった偏見を捨てることも重要です。
客観的な視点でもって、自身と相手の何が同じで何が違うのかを冷静に判断し、コミュニケーションをとれば、不要なトラブルを回避できます。
③傾聴力を高める
価値観の衝突や意見の対立が発生してしまった際に求められるのが、傾聴力です。
海外の方と議論する際には積極性が必要だと述べましたが、ときには、相手の意図や考えをきちんと汲み取るために傾聴する必要もあります。特に対立が生じた際には、否定から入るのではなく、相手の話を聞く姿勢を見せて歩み寄ることが必要不可欠です。
まとめ
この記事では、異文化コミュニケーションについて以下を解説しました。
- 異文化コミュニケーションの概要
- 異文化コミュニケーションを重視すべき理由
- 異文化コミュニケーションの失敗例
- 異文化コミュニケーションのポイント
グローバル化の進む日本においては、異文化コミュニケーションに取り組むことが最重要事項の一つであるといえます。しかし、従来的な価値観のまま異文化コミュニケーションへの取り組みを進めてしまうと、予想だにしないトラブルへと発展しかねません。
特に企業の場合は、そうしたトラブルが大きな損失につながる可能性もあります。そのため、専門家による研修を実施し、従業員の異文化コミュニケーションに対する理解度を深めておくことが大切です。
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