
異文化コミュニケーションとは? 失敗例やポイントも解説
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グローバル化や多様化といったワードが身近となった昨今、自身とは異なる価値観をもつ相手と仕事をする機会が、徐々に増えつつあります。そこで重要となるのが、”異文化コミュニケーション”です。
今回は、異文化コミュニケーションとは何か、そしてその失敗例や実践のポイントを解説いたします。
異文化コミュニケーションとは
異文化コミュニケーションとは、その名が示す通り、自身とは異なる考え方やバックグラウンドをもつ相手と、コミュニケーションをとり交流を図ることです。ここでいうバックグラウンドには、国籍のみならず、年齢や性別、歴史、文化など多種多様な要素が含まれています。異文化コミュニケーションは、海外の方との交流だけではなく、日本人同士でのやりとりでも必要となる機会があるわけです。
異文化コミュニケーションにおいては、自身の価値観を押しつけたり、相手の価値観を非常識だと決めつけたりしてはなりません。客観的に自身と相手の違いを理解し、尊重する姿勢が求められます。
異文化コミュニケーションの歴史
異文化コミュニケーションが注目を浴びるようになったのは、1970年代に入ってからといわれています。そのきっかけは、社会心理学者のホフステードが実施した意識調査にあります。ホフステードはこの調査をもとに、似たような属性をもつ人物でも、国籍によって思想や行動が異なることを発見しました。それを“文化的次元”と名づけ、異文化理解の指標として提唱し始めます。
これを受け、人々がもつ多様なバックグラウンドは、思想や行動にも違いをもたらすという認識が広まりました。これ以降、異文化コミュニケーションは新しい学問の分野として確立されました。
異文化コミュニケーションを重視すべき理由
近年、多くの日系企業が異文化コミュニケーションの推進に努めています。しかし、なぜ異文化コミュニケーションは重視されているのでしょうか。
ここでは、その主な2つの理由を説明いたします。
①日系企業のグローバル化が進んでいるから
まず大きな理由として挙げられるのは、日系企業のグローバル化が進んでいることです。
事業の拡大を目的に外資系企業と連携する、あるいは海外市場へ進出する日系企業の数は年々増加しています。それに付随して、異なる言語や文化をバックグラウンドにもつ方とやり取りをする機会も自然と増え、異文化コミュニケーションの重要性が高まりました。各企業が異文化コミュニケーションの重要性に注目し始めたのには、このような背景があります。
②多種多様な人材を確保する必要があるため
異文化コミュニケーションは、多種多様な人材を活用するうえでも、非常に重要な役割を担っています。
海外に進出せず国内だけで活動する企業でも、労働力の改善を目的に、外国人労働者を雇うケースは往々にしてあります。従来は男性ばかりだった職場で女性を採用する、高齢者や障がい者の方に活躍してもらうといった事例も多く、多様性の広がりはとどまることを知りません。
しかし、異文化コミュニケーションへの取り組みが不完全な状態では、多様性に富んだ人材の確保は難しく、採用できてもすれ違いや衝突が発生しかねません。多様な価値観をもった人材に活躍してもらうためには、雇用者側が異文化コミュニケーションに取り組み、職場環境を整えてあげる必要があります。
異文化コミュニケーションの失敗例
異文化コミュニケーションに取り組み始めたはよいものの、勝手が分からず失敗してしまった、という話は決して珍しくありません。
ここでは、異文化コミュニケーションにおいて注意すべき失敗例を、6つ紹介いたします。
①ハイコンテクストなコミュニケーションに頼ってしまう
ハイコンテクストなコミュニケーションに頼り失敗する、というのは、特に日本ではよくみられるパターンです。
日本人は、文脈や発言のニュアンスから真意を察してもらうという、ハイコンテクストなコミュニケーションに慣れている傾向があります。しかし、このようなコミュニケーションは、日本に慣れていない方には曖昧で不明瞭であると受け取られてしまいます。
特に海外の方とやり取りする際には、言いたいことややってほしいことを明確にするのが大切です。何か質問する際にも、YESかNOで答えられるシンプルで分かりやすい表現を用いると、スムーズに話を進められます。
②非言語コミュニケーションで誤解を招いてしまう
普段何気なく使っているジェスチャーや、発言の際の表情などの、非言語コミュニケーションの面でも注意を払う必要があります。
例えば、日本では問題ないことを意味する”OK”のハンドサインは、フランスでは”無価値”であることを意味します。この例に限らず、日本では問題ないとされているジェスチャーや表情が、ある国では不謹慎であったり、失礼であったりすることは、珍しくありません。非言語コミュニケーションは、ときには使わないほうが賢明であると、理解しておいてください。
③従来的な上下関係を押しつけてしまう
日本の従来的な上下関係を良く思わない方は少なくないため、押しつけないように注意してください。
上司や目上の方には敬語を使う、といったような礼儀作法は日本では当たり前ですが、海外ではそうした上下関係が形成されることはそれほどありません。相手が上司であっても言いたいことは言う、ファーストネームで呼びかけるなどは日常的な光景です。このような認識の違いから、誤解やすれ違いが生じないように努めることも、異文化コミュニケーションでは求められます。
④会議の場で消極的になってしまう
日本では、会議でほかのメンバーを気遣って、自身の発言を控えても大きな問題にはなりませんが、海外では評価が下がる大きな要因の一つとなりえます。なぜなら、海外では多くの場合で、とにかく率先して意見を出すことが重要視されているからです。
もし海外のメンバーが多くを占める会議に出る機会があるなら、積極的な姿勢を見せることを意識してみてください。
⑤不用意なユーモアや発言でタブーに触れてしまう
場を和ませる意図で発言した内容が、相手の歴史的、あるいは文化的なタブーに触れてしまう可能性もゼロではありません。
ユーモア一つとっても、出身地や属する文化圏などの違いによって、どのように受け取られるかはまったく異なります。そのうえ、政治や宗教の観点から、特定の話題あるいは単語がNGである方もなかにはいます。
親しくなるための話題作りに臨む前に、相手の考えや主義・主張を事前にきちんと把握しておくことが肝要です。
⑥残業の捉え方の違いによってトラブルが起きてしまう
日本と海外では、残業の捉え方が異なる場合があります。
日本には“残業は美徳”という文化が現在でも一部の企業に残っており、長時間働くことが仕事に対する責任感や会社への忠誠心の証明とみなされるケースも少なくありません。一方、海外では“残業は仕事ができない人がするもの”という考え方が一般的で、仕事においては労働時間よりも、生産性や効率性が重視されます。
このように、日本と海外は残業に対する考え方が真逆であるため、外国人の“定時には仕事を切り上げる”という文化に対し、理解を深めなければなりません。残業をしない外国人に対し否定的な態度をとらないのはもちろん、残業を依頼する場合には、その理由や目的を明確に伝えると、トラブルを未然に防げる可能性があります。
異文化コミュニケーションのポイント
最後に、異文化コミュニケーションを実践するうえで重要となる、4つのポイントを解説します。
①文化や歴史の違いを受け入れる
人によって触れてきた文化や歴史がまったく異なり、それゆえに物事に対する考え方も変わってくる、という事実を理解することが重要です。特に、人間関係や仕事への取り組み方、時間に対する意識にはその違いが大きく表れます。
例えば、海外では仕事において”報連相”はさほど重要視されていません。くわえて、納期や待ち合わせなどの、約束の時間を守らないことも多々あります。そのような事態に直面した際には「自分の常識が通じて当たり前ではないんだ」というマインドで、フレキシブルに対応することが大切です。違いを否定せず、歩み寄る姿勢をとることによって、異文化コミュニケーションを円滑に進められるようになるはずです。
②客観的な視点をもって接する
実際に自身と異なる考えをもつ方と出会った際は、感情的にならず、客観的な視点をもって接することを意識してください。また、客観的に相手と接するうえでは、「この地域の人はこういう特徴のはずだ」といった偏見を捨てることも重要です。
客観的な視点でもって、自身と相手の何が同じで何が違うのかを冷静に判断し、コミュニケーションをとれば、不要なトラブルを回避できます。
③傾聴力を高める
価値観の衝突や意見の対立が発生してしまった際に求められるのが、傾聴力です。
海外の方と議論する際には積極性が必要だと述べましたが、ときには、相手の意図や考えをきちんと汲み取るために傾聴する必要もあります。特に対立が生じた際には、否定から入るのではなく、相手の話を聞く姿勢を見せて歩み寄ることが必要不可欠です。
④相手の日本語レベルに合わせて会話する
外国人が習得している日本語のレベルには、個人差があります。そのため、相手のレベルに合わせて会話することも考慮したいポイントです。
また、外国人と会話する場合は、聞き取りやすいように普段よりもゆっくり話す、または丁寧な日本語を心がけるとよいかもしれません。その理由は、外国人が学ぶ日本語は教科書に記載されているような、丁寧な日本語であることが多いからです。
くわえて、会話の際に使用される「えー」「あのー」といった言葉は、相手が話の内容を理解しにくくなるため、避けたい話し方です。
異文化コミュニケーションのスキルが役立つシーン
異文化コミュニケーションのスキルが重要となるのは、外国人と交流する際だけではありません。日本人同士であっても、企業文化の違いや、部署の違いなども異文化であり、そういった場合でも異文化コミュニケーションは役立ちます。
同じ日本人であっても、一人ひとり価値観や思考は異なるものです。そのため、仕事を進めていくなかで意見のすれ違いが起こることも考えられます。そこで効果を発揮するのが、異文化コミュニケーションのスキルです。異文化コミュニケーションで大切な“相手を理解・尊重する力”や“客観的な視点をもって接する力”などを生かすと、日本人同士でもより良い関係を築くことにつながります。
これにより、活発かつ円滑なコミュニケーションがとれるようになれば、日本人・外国人に関係なく、企業のために活躍してくれる人材に育ってくれます。
異文化コミュニケーションのスキルを伸ばすためにできること
グローバル化が進む現代において、自社の従業員にも異文化コミュニケーションのスキルを習得してもらうことが重要です。
ここからは、スキルを伸ばすためにできる2つのことを紹介します。
①異文化に触れる機会を提供する
従業員の異文化コミュニケーションのスキルを伸ばすには、実践を繰り返すことが不可欠です。多様なバックグラウンドをもつ方々と話すと、それぞれの価値観や思考を肌で感じられるようになります。
異文化交流を促進するためには、海外研修の制度を設けるほかにも、異文化イベントを開催するなど、異文化への偏見のない職場環境を整えることが大切です。
②異文化理解を深めるための研修を実施する
従業員向けに異文化理解研修を実施することで、異文化や多様性への理解が深まるだけでなく、異文化コミュニケーションのスキルも向上させることが可能です。
研修では、異なる文化をもつ他者を相手とする際に重要なスキルを、実践を交えながら教えてもらえます。それがスキルを効率的に伸ばすことにつながり、従業員がグローバルに活躍する人材へと成長する可能性が高まるわけです。
例えば、株式会社EdulinX(エデュリンクス)が提供する“異文化コミュニケーション研修”では、さまざまなアクティビティを通じて、実務で役立つグローバルな対応力を醸成できます。また、知識の習得はもちろん、担当講師との会話を通じて相手の感情への対応方法が学べるのも大きな魅力です。
まとめ
この記事では、異文化コミュニケーションについて以下を解説しました。
- 異文化コミュニケーションとは
- 異文化コミュニケーションの歴史
- 異文化コミュニケーションを重視すべき理由
- 異文化コミュニケーションの失敗例
- 異文化コミュニケーションのポイント
- 異文化コミュニケーションスキルが役立つシーン
- 異文化コミュニケーションのスキルを伸ばすためにできること
グローバル化の進む日本においては、異文化コミュニケーションに取り組むことが最重要事項の一つであるといえます。しかし、従来的な価値観のまま異文化コミュニケーションへの取り組みを進めてしまうと、予想だにしないトラブルへと発展しかねません。
特に企業の場合は、そうしたトラブルが大きな損失につながる可能性もあります。そのため、専門家による研修を実施し、従業員の異文化コミュニケーションに対する理解度を深めておくことが大切です。
株式会社EdulinX(エデュリンクス)では、異文化コミュニケーション研修をはじめ、異文化理解のためのさまざまな研修をご案内しております。ニーズに合わせて最適な研修プランを提示させていただきますので、ご興味がございましたら、ぜひ一度お問い合わせください。
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